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アレルギーなどもない、本当に健康だけが取り柄みたいな私だ。安心してホッと息を吐くと、竜王様が「心配だから、基本的な健康診断もやってくれないか」と言い始めた。
「私、あっちの世界でも病気ひとつしたことないほど、健康でしたが……」
「こちら特有の病気にかかるかもしれない。一度しっかり診てもらえ」
たしかに。そう言われると、異世界にどんな病気があるのか知らない。リディアさんも「ぜひ診てもらってください」と勧めるので、私はまたお医者様に向き合った。
「そうですな、健康診断もしておいたほうが良いでしょう。ではまず――」
カリカリと手元の紙に今までの症状を書いたあと、お医者様は顔をあげ、真剣な表情で私を見た。
「迷い人様は現在、身ごもっていませんか?」
「えっ? はっ? な、な、なにがですか?」
「妊娠」というワードに飛び上がりそうになるほど驚いてしまい、まともな返事ができない。もしかして「竜王の卵」のことがバレた? やっぱりこの国のお医者様なら、黙っていてもわかってしまうの?
「あ、え、えっと、妊娠は……」
私がなんと言っていいかわからず、パクパクと口を動かしていると、リディアさんがコホンと咳払いをした。
「リコ、これは健康診断でよく聞かれることですから。お医者様、リコはここに来て日が浅く、緊張しています。それに男性のいる場所ではちょっと……」
そう言うと、リディアさんはチラリと竜王様を見た。
(そういう意味か! バレてしまったのかと思ったけど、日本でも問診票に妊娠の有無を答える項目があるもんね)
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