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きっぱり宣言するように言うと、なぜか竜王様は「ふっ、当たり前だろう」と言ってニヤリと笑った。なぜあなたがそんなに満足気に笑っているのか……? 不思議に思って竜王様を見上げていると、お腹のほうから悲しそうな声が聞こえてきた。
『ぼくがお腹にいるのに……』
「ぐう……!」
(板挟み! 板挟みで苦しい……!)
子供の声は私にしか聞こえてないみたいだから、誰も気づいてない。しかしそのボソリと呟いた泣き出しそうな声は、私の心を確実にえぐってくる。
お腹にいる竜王の卵は、それっきりまた黙ってしまった。私の言うことを聞いて大人しくしていると思うと、さらに胸が苦しい。
(はあ、どうしたらいいんだろう?)
そのあともお医者様の健康診断は続き、何か不思議な道具でいろいろ調べられたが、すこぶる健康体ということがわかった。それでも気がかりなのは、さっきから何も話さない卵のこと。私がなぐさめるようにお腹をなでても、何も反応がない。
「リコ、どうした? お腹を押さえてるが、痛いのか?」
「い、いえ、その、何も食べてないので、お腹が鳴りそうで」
ごまかすようにそう言うと、竜王様は「そうだったな。元気なら朝食を食べたほうがいいだろう」と笑った。リディアさんも「急いで用意しますね」と言って、健康診断が終わったのをきっかけに、三人はそのまま部屋を出て行った。
パタンと扉が閉まった音が鳴ると同時に、私はお腹に向かって話しかける。
「……竜王の卵くん?」
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