たまご

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 目を開いた瞬間。僕は世界の景色に絶望した。  目の前に広がるこの世界は美しいものではなかった。  初めて世界を見た時、なんて広くて怖いのだと思った。  自分の姿を初めてみた時、なんて汚くて気持ち悪いんだと思った。  僕は初めて、母の言っていたことがどういうことかがわかった。  「気持ち悪い」  それがどういう意味なのかを理解した。目の前にいる彼女は大きくて、立派で、強そうで、かっこいいのに、それに比べて僕は?  なんて醜い姿なのだろうか。  僕はたまごとして生きていたかった。ただそこに存在するだけで、外の世界には干渉しなくていい。殻の中に閉じこもっていれば、安全で何も怖いことなんてない。  ただ、アンさえそばにいてくれれば、たまごの僕には何もいらなかった。  けど、この世界は違う。初めて見るものが沢山あって、沢山の何かが動いてる。  これから先、僕はこんなに多くのものを、覚えて、関わって、生きていかなければならないのだと思うと怖くて仕方がなかった。    
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