祖母

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庭には、立派な桜の木があった。 オオシマザクラ 名前は祖母から教わった。 祖母が結婚する時に 祖父が苗木を植えてくれたらしい。 祖父は、私が生まれるよりも前に亡くなっていて 顔も写真しか見たことはないし どんな人かも分からない。 ただ "祖母が大好きな桜の木をプレゼントした優しい祖父" そんなイメージは 何百回聞いたか分からない昔話と 乙女のような表情の祖母を見て なんとなく 幼いながらも感じ取っていた。 その葉を使って、祖母はよくおやつに桜餅を作ってくれた。 毎年、春頃から桜の葉をむしっては塩漬けにして それを白玉粉などで作った生地と一緒に あんこを挟めば完成。 ほんのり香る桜の香りと 塩っけにあんこの甘さが混ざる独特な味が 何より 「おいしくなあれ。おいしくなあれ。」 そう言いながら、生地をこねる祖母を覗き込んで見えた 手のひらでピンク色に光る桜餅が、まるで宝石のようで そんな二人だけの特別感が 私はとても大好きだった。
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