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「…ただいま。」
「あらひぃちゃん、おかえり。今日は遅かったんだね。」
「…みっちゃんちでゲーム。」
「そうかい。楽しそうで良かったねぇ。ひぃちゃんと仲良くしてくれる御礼に、また今度家に遊び連れておいでね。ひぃちゃんの大好きな桜餅をたんと作ってあげるからね。」
「…らない。」
「?ごめんねぇ。歳ですっかり耳が遠くなって、ひぃちゃんの声が聞こえなくて…」
「だから!桜餅なんていらないってば!!」
大きな声を出してからはっとした。
恐る恐る祖母の顔を見る。
祖母は笑顔のままだった。
「そうかいそうかい。やっぱり、今時の子は和菓子はあかんかったかねぇ。ひぃちゃんは、何が食べたいんだい?」
優しい口調は変わらない。
私の食べたいものを純粋に知りたいだけなんて
わかってる
わかってるけど
…
「しっ、知らない!!」
祖母の顔を見ずに叫んで
地団駄を踏みながら廊下を歩く私を
今の私が見ていたとしたら
間違いなく
足を引っ掛けて転ばしてやりたい。
なんなら
首根っこ掴んで
すぐさま祖母に謝らせたい。
そう思うくらいには
小さな後悔が沢山ある。
…
今でも。
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