満開の桜など見たくなかった

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 2XXX年、私たちの墓参りは変わった。前までは墓石だけだったのだがそこに桜の木が植えられるようになった。  その桜の木は不思議なもので、亡くなった人がこの世に未練がなく成仏しているなら満開の桜が咲く。しかし、この世に未練があるのならば花が開かないようになっている。  ではどうやって花を咲かせるのか。それは亡くなった人の未練を晴らせばよい、と言うことだ。亡くなった人とは成仏するまでは意思疎通ができるようになっている。よって何に未練が残っているのか聞き出して解決すれば良いのだ。  俺はもう何度も読み込んでグシャグシャになったそのパンフレットを閉じた。  その後上着を着てスマートフォンを上着のポケットに、そして財布をズボンのポケットに入れて外に出ようとした。 「あぶね!忘れる所だった。」  彼女に会うのが楽しみすぎたらしい。すっかり花を持っていくことを忘れていた。俺は彼女が好きだった花の花束を持った。 「よし、忘れ物はないな。」 俺は今度こそ、彼女に会うために玄関から出ていった。
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