SP症候群

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SP症候群

『その時』というのは突然訪れるものだ。隣の部屋からガタガタと何かが倒れた様な大きな音が聞こえ、身をすくませた。 「うわっと」 パンをテーブルに落としてしまい、パン屑を皿に拾った。早朝のテレビからは、AIの無機質な声が流れている。アナウンサーはこの時間は何をして暇を潰しているのだろう。雑談だとしたら、意外とおいしい時間じゃないかと思う自分の心の狭さが嫌だ。 『速報です。全世界的に広まりつつあるSP症候群ですが、今や一一』 「…?」 あのコンビニ前にいた中年を思い出す症状だ。何でも石化のごとく止まってしまった人間は、その翌日には死に至るらしい。SPは、stopの縮めたネーミングであり、世界的に広まっている奇病との事だった。 別にいつ石化しても俺は構わないんだが 即席の味噌汁を流し込み、パンをなおもかじりながらインスタントコーヒーを飲む。 この世界にすぐに死にたくない人間なんて、金持ちとか、人生を謳歌しまくっている奴等だろう。奇病といいつつ、政府は老人が減ればいい等と内実思っているのではないだろうか。 ノーアイロンシャツを着て、ネクタイをゆるめに締め代わり映えしない背広を引っかけ、家を出た。
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