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買い占め?
「おはようございます」
「おはようございます」
「あれ、薪田さんだけですか?」
「はい。誰も来てなくて」
同じ部署の蒔田さんが困惑顔で答えた。黒渕の眼鏡とショートカットが特徴の彼女だが、この騒ぎで心なしか顔色が悪い気がする。
「山田さんの周りで、SP症候群の方っています?」
「いる、と思います」
「これからどうなるんでしょうね。このビルのコンビニも店員さんが一人しかいなくて、並んでましたし」
「そうですか。人がいないのかな」
大型のコンビニなのに店員が一人とは、普通ではない。それもそうだがふと思いあたる事があった。
「あ!課長お休みなんだ」
「え、あ、本当だ。部長も?」
会社のグループのメッセージアプリに、続々と休みの連絡が届いている。
やっぱりか
地震の時みたいに
「蒔田さん、これ、買い占めするんじゃないかな。国民全員」
「えっ!だからあんなに並んで?嘘、どうしよう。働いてる場合じゃないですよね?」
「確かに…とりあえずコンビニに行ってみますか。事務所施錠して」
「でも、、」
「たぶん誰も来ないと思います」
「そっか。そうですよね。もう帰りましょう」
「帰宅ですか?」
「はは、コンビニは行きますけど」
笑顔に少し勇気づけられる。不穏な空気を感じてはいても、いつも通りに笑って、そして食べ物を咀嚼してというのが大事なのかもしれない。
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