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―――
「聞いた話なんだが。男性がジョークのつもりで元カノが忘れていった妊娠検査薬を使ったら陽性って出て、一応病院に行ってみた結果、精巣ガンだった事が判明したらしいぜ。」
「え……?精巣、ガン?」
「それって大変じゃない!もしかしたら友くんも……」
心配そうな顔の翠さんと何処までも冷静な森沢の顔を交互に見た僕は、ゴクッと一口ビールを飲んだ。
「行ってみたら?病院。」
翠さんの一言に僕は決心した。
こうとなったら恥を忍んで病院に行こう。妊娠してなくてもいい。いや、そもそも男の僕が妊娠なんてする訳がないんだ。
そして妊娠なんてお気楽な僕が夢想した夢物語で、真実は森沢の言う通り精巣ガンだったら?
ふるふると頭を強く振って、恐くて震えだした手にギュッと力を込めた。
こうやってグズグズ悩んでいるよりもはっきりさせようじゃないか。
そう思って二人を見た瞬間、とてつもない目眩に襲われた。体から徐々に力が抜けていく。
翠さんと森沢の足が見えた刹那、僕の意識はブラックアウトした。
『友成!!』
何故だか彼の声が近くで聞こえた気がした。
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