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第3話 目覚めたその瞳が映すもの
―――
「う〜ん、ここ、は……?」
ぼんやりと目を開ける。一番最初に見えたのは白い天井だった。
「あ……僕、倒れたんだった。……はっ!」
勢いよく体を起こして慌ててお腹を撫でる。でもすぐにパッと手を離した。
「馬鹿だなぁ……」
いもしない赤ちゃんの心配なんかして……ホント、馬鹿だ。
きっとあの時森沢が言った通り精巣ガンで、これから主治医の先生が来て検査するんだ。手術したりするのかな?仕事はどうしよう……なんて考えてたら誰かがカーテンを開けた。
てっきり先生かと思って何の躊躇もなしに顔を向けた次の瞬間、後悔した。
「城田……さん。」
「おはよう。友成。」
僕は城田さんの目が見れなくて、病院の白くて綺麗な布団をギュッと握ったまま俯いた。
「救急車でお前を運んだ時、翠とあの眼鏡が精巣ガンかも知れないからって検査しろとやたらうるさかったが、事情を聞いて合点した。」
刺すような城田さんの視線が痛くて、僕はますます身を縮こませた。
「妊娠検査薬を使った男が、実は精巣ガンだったというニュースは聞いた事があった。お前の場合もその可能性はあるかも知れないと思って一応検査した。」
「……え?」
城田さんの言葉に勢い良く顔を上げると、彼の真っ直ぐで綺麗な瞳とバッチリ目が合ってしまった。
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