第3話  目覚めたその瞳が映すもの

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――― 「友成の事を信じるとすると想像妊娠という結論は間違いだ。よって導き出される答えは?……検査薬が壊れていた。それだけの事だ。」 「!!」 至極真面目な顔で放たれた言葉に、僕は呆然とした。 「そんな!それだけの事で悩んでたの……?」 わかっていた、自分でもわかっていたんだ。検査薬が壊れていただけ。妊娠なんて僕が勝手に作り上げた幻想だって事。だけどそんなにあっさりと結論づけてしまわれたくなかった。 何の為に悩んでいたのか、僕がどんな事を考えているのか、城田さんに知って欲しかった。 だから僕は意を決して口を開いた。 「もしですよ?男性が自然妊娠する可能性はありますか?」 あの検査薬は正常で、精巣ガンでもなければ想像妊娠でもなかったとしたら? 万に一つの可能性に、僕は賭けた。 「残念だがそれはあり得ない。」 「……」 城田さんの言葉を聞いた僕の目から流れた一筋の滴が、静かに布団に吸い込まれていった。 .
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