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事の発端は、僕が同じ高校に勤務する同僚の森沢に最近の体調不良を相談した事から始まった。
「森沢ぁ〜、どう思う?」
「う〜ん……胸やけに吐き気に倦怠感ねぇ……」
僕の問いかけに、森沢は真剣な表情で顎に手を当てる。
僕はここ二週間くらい、原因不明の体調不良に悩まされていた。
胃の辺りが胸焼けしたようにモヤモヤしたり、突然の吐き気に襲われたり全身が酷く怠い。
仕事には支障をきたしたくない、他の先生方や生徒に迷惑をかけたくない、そんな気持ちでなんとか切り抜けてきたが同僚の森沢には気づかれていて。
仕事が終わった僕達は、森沢の行きつけのこの居酒屋に来たのだった。
「胃でも悪いんじゃないのか?それにお前、健康診断受けてないだろ。」
「うっ!まだ若いからいいんじゃないかな〜って……」
「はぁ〜……お前なぁ、いくら若いからって健康診断くらい受けろよ。」
「……はい。」
眼鏡の奥の目に睨まれて慌てて頷いた。
「健康診断かぁ〜、あ、でもさぁ!」
「……何か嫌な予感がするな。」
今日に限って症状が出ていないから油断していたのかも知れない。まだ二杯しか飲んでいない森沢に比べ、僕はすでに四杯飲んでいた。
胡乱な目で僕を見る森沢を他所に、僕は残っていたビールを一気に煽った。
「何かこれってさ、妊娠の初期症状みたいだよね〜」
最初は冗談というか笑い話のつもりだった。だけど口に出したら何だか頭がその考えに支配されてしまって……
驚いた顔をした森沢を見た瞬間、僕の中で何かが壊れた気がした。
「あはは!な〜んてね。そんな訳ないじゃ〜ん。あ、でも今から買って試してみようか?」
「か、買うって……何を?」
「妊娠検査薬。」
「ぶっ!」
盛大にビールを吹き出す森沢を見て大笑いする自分の顔が、森沢の眼鏡に反射して見えた……
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