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―――
そしてその後は嫌がる森沢を連れてコンビニに行き、妊娠検査薬を買った。男同士でそんな物を買う二人組を店員は怪訝な顔で見たけれど、今の僕にはそんな事は関係なかった。
確かめたい、ただそれだけを胸に自宅へと向かったのだった。
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「はぁ〜……」
一人になった部屋で僕はため息をつきながらソファーに座った。
あの後、ドアを壊さんばかりに叩く森沢に負けてトイレから出てきた僕は、心配する彼に作り笑いを浮かべてこう言った。
『何焦ってんの〜?妊娠なんかしてる訳ないじゃん。冗談だよ、冗談。ただちょっと酔いが回ってきて具合悪かっただけ。』
そしてまだ何だかんだうるさい森沢を、半ば強引に家から追い出したのだった。
「……どうしよう。」
愛しい彼の顔を思い出す。そしてそっと自分のお腹を撫でた。そうすると不思議な事にそこから熱が発しているように感じる。僕はゆっくりとソファーに横になった。
いつだったか、男性が妊娠したというニュースを見た事を思い出す。
まさかとは思うが僕にもその人と同じ事が起きたのだとしたら?そこまで考えて僕はふるふると首を振った。
検査薬で陽性と出たとはいえ、本当に妊娠したとは限らないし、そもそも男性が妊娠するなんてあり得ない。あんなニュース、きっとデマだろう。
検査薬は確実ではないと聞くし最近の体調不良はただの風邪か胃腸炎に違いない。
だけどそんな風に自分を慰めながらも、もしかしたらという期待を拭う事は出来なかった。
もし本当の本当に妊娠していたら?
今この瞬間にも、この僕の中で小さな命が鼓動を刻んでいたとしたら?
城田さんとの子どもを生む事が許されたのだとしたら……?
そこまで考えついた僕は、知らずに溜まっていた涙をそのままにしてギュッと目を瞑った。
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