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城田さんを好きになった当初は、男の人を好きになった事に戸惑いを感じた。だけど城田さんと話をして顔を合わせる内に、そんな事は気にならないくらいに夢中になっていった。
城田章という人、そのものの魅力に惹かれていったのだ。
僕の告白を城田さんが受け入れてくれた時は本当に嬉しかった。でもその反面、男同士だという事の不安は少なからずあった。
男の僕と付き合ったって結婚できる訳でもないし、子どもも産めない。だったら僕なんか相手にしないでちゃんと女の人と幸せになった方がいい。
そう思ったのに欲張りな僕は、城田さんを諦める事は出来なかった。
城田さんが傍にいてくれるなら結婚できなくていいし子どももいらない。二人でいられればそれでいい。
――そう、思っていた。思っていたのに。
「会いたいな……」
最近は忙しくて中々会う事は出来なかった。会っても玄関先で立ち話とか事務所にお弁当を持って行ってすぐに帰るとかで、恋人らしい事などしていない。
小さいため息をつくと、僕は突然襲ってきた睡魔に身を任せた。
結婚出来なくてもいい、子どもなんていらない。そんなのは嘘だ。
一生傍にいさせて欲しい。愛する人の子どもを産みたい。
浅はかな僕は叶わないと知りつつも、そう風に思わずにはいられないのだ。
そんな僕の切実な想いを神様は叶えて下さったのだろうか。
幸せになってもいいのだと言っているのだろうか。
僕はふっと自嘲気味な笑みを浮かべると、遠い世界に意識を飛ばした……
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