第2話 乙女よ、眠れ

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第2話 乙女よ、眠れ

――― 「妊娠検査薬で陽性が出たぁ!?」 「ちょっ、ちょっと翠さん!声が大きいですって……」 「ふ〜ん、成程ねぇ……それで元気がなかった訳か。」 「森沢も冷静に分析してないで、僕の話ちゃんと聞けよ。」 「聞いてるって。でもほら、黒木さんがどっか行っちゃってるじゃないか。何とかしろ。」 「あ、そうだ!翠さ〜ん、戻ってきて下さい!」 「……あら、ごめんなさい。あまりの事に私とした事が取り乱しちゃったみたいね。」 翠さんがハンカチで額の汗を拭いながら僕の方を見た。 黒木翠さんは、以前僕が城田さんの浮気相手なんじゃないかと疑ってしまった女性だ。そんな人と何故こんなに親しくしているかと言うと、城田さんと同棲を始めてすぐに翠さんの方から僕に連絡があって誤解させてしまったお詫びにとお茶に誘ってくれたのがきっかけだった。 最初は身構えたけれど翠さんはとても気さくで優しくて気も合ったので、たまに会ったりしていたのだ。ついでに森沢も紹介したりなんかして、こうして三人で居酒屋に集まってお酒を飲む事も珍しくなかった。 今日は昨日の出来事を自分一人の胸の内に閉まっておく事が出来なかったので、こんな時は翠さんに相談しようと僕が誘ったのだ。森沢には流石に隠しておけないだろうと思って用事があるとさっさと帰ろうとしたところを無理やり連れてきたのだけど…… 早速とばかりに昨日の事を口に出した瞬間響いたのが、翠さんの大声である。 .
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