夏空の果て

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川越夏奈は町田悠子からの荷物を受け取った。 「届いた!」 すぐに段ボール箱を開封すると、思った以上の本が入っていた。すべてが夏奈の大好きな新選組の古書である。一つ一つ手に取った。悠子は碧空という新選組サークルのベテラン会員で、もうこの年だから断捨離をすると蔵書を一部譲ってくれたのである。夏奈は一通り目を通すと古写真が表紙の本を見て手が止まった。 写真にはやや線の細い侍が写っている。見たことの無いものだった。“この写真を見ていただきたい”という文章が添えられている。夏奈は本の表紙をじっと見ながら小声で読み上げた。 「箱館まで土方歳三に従軍した新選組隊士の森本京次郎が所持していたものである。ご子孫の好意で初めて世に出る、これこそが新選組の沖田総司の 真影である…」
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