夏空の果て

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翌日も朝食もそこそこに夏奈は読み続けた。アイスコーヒーを時々飲むだけで、昼前に裏表紙を閉じるまで一心不乱に読んだ。 「はあー」 アイスコーヒーを飲み干し、スマホを取るとスルーしていたラインに軽く目を通した。 「ほとんど永倉新八さんの話だったな。斎藤一さんは、まだあまり知られていなかったのかな」 ペラペラと本を見返す。夏奈の好きな新選組隊士は斎藤一だ。ミステリアスだと思う。 やはり沖田総司の写真は作り話なのだろうか?夏奈のイメージとは違っていたが、虚構であるなら、それも残念に思った。 とたんに夏奈は空腹感を感じ、チーズトーストを作ってほおばった。 午後はラインを返したり、本のタイトルで検索したりして過ごした。特に新しい情報はなく、作者のこともわからないままだ。 二、三日、沖田総司の写真の謎でモヤモヤしていたのだが、同じ史学科の友人である田柄ひかりに電話をした。 ラインでだいたいのことは話してある。 「その本読んだことあると思うんだ」 「そうなんだ~、さすが~」 「うちにある幕末関連の本は全部目を通したつもり。内容に天誅はなかったから記憶ないけど。沖田総司の写真ってなんかあったな」 ひかりの父親はそこそこ知られている時代小説家で、その環境の中で幼い時から歴女であった。今は幕末の暗殺に興味を持っている。 「それ直接問い合わせてみたら?ファイヤースポーツ新聞って今もあるじゃない」 「五十年近く前の本だよ。ベテランの愛好者でもわからないってゆうし」 「まずはメール。わからなきゃわからないって言うでしょ。何かあったら新発見だよ」 「新発見か!」 この言葉に新選組好きは弱い。長電話の後のテンションで夏奈はファイヤースポーツのホームページから問い合わせてみた。
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