夏空の果て

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一週間ほどは何もなく夏休みを楽しんだ。 「お問い合わせの件について」というタイトルのメールを図書館帰りに夏奈は受け取った。開くとファイヤースポーツ新聞社出版部の文字が目に入った。 「ほんとに来た!」 挨拶文のあとに、以前も同じ問い合わせがあったとあり、個人的に気になるので、出版部のOBに問い合わせてみるので時間をいただきたい旨の記載があった。 「ほんとにー、ほんとにー、わおっ」 周りに人こそいなかったが路上で夏奈はジャンプしそうになった。 その次のメールも思ったよりも早くに連絡があった。 「神だー。ファイヤースポーツの海堂功武さまー、なになに?」 ──お尋ねの、『明治新選組まぼろし録』の出版に関わった弊社OBの佐藤という者に話を聞いたところ、あの写真はかなり古いもので、著者が新選組隊士の森本京次郎子孫宅からお借りしたもので、その後確かに返却されたとのことです。この著者の桜田道彦とは、実は佐倉美千子という当時三十代の女性だそうです。残念ながら佐倉さんは一九八X年の雷山(いかづちやま)航空機事故でお亡くなりになっております。続報がなかったのはそのせいでしょう。なお、森本という新選組隊士の子孫は都内に住む下新倉さんというお宅で、現在も在住しているかは不明ですが、調べられる範囲内で調査してみます── 知りたかったのは、本物の沖田総司の写真かどうかであったが、メールの内容はもっと重いものだった。 「イカヅチヤマ、あの事故だよね」 夏奈でも聞いたことのある、昭和の大航空機事故だった。毎年八月になるとニュースで取り上げられる。 佐倉美千子。今知ったばかりの名前を読み上げると、雷山航空機事故で検索を始めた。少し手が震えた。
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