夏空の果て

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夏奈は検索画面に見入った。 ──「雷山航空機墜落事故」 一九八✕年、八月十一日。東京発大阪行きの青海航空機が埼玉県の雷山の尾根に墜落した。原因は不明。乗客乗員五○五名のうち五○四名が死亡。著名人も多く遭難した。デビュー直前のアイドルグループ、オーガストのメンバーである下新倉雪斗と大網春樹の二人が死亡し、現在俳優として活躍する白楽大也が唯一の生存者である── 冒頭のそれだけでも夏奈の胸の高まりは止まらない。ウィキペディアの解説は非常に長いものだった。ようやく乗客名簿の項になり、落ち着いて視線を進ませると“佐倉美千子”の名前も見つかった。思わず夏奈は手を合わせていた。 改めて佐倉美千子の名前で検索をかけたが、似通った名前の人物しか出てこない。 それにしても、白楽大也が事故の生存者であることも初耳だった。夏奈にとっては時代劇のスーパースターである。 「昔、沖田総司さんの役もやっていたよね」 親友の田柄ひかりの家のリビングで古い新選組ドラマのビデオテープを見せてもらったことがあった。 続いて白楽の名前で検索をする。最初に出てくる公式ページのプロフィールには飛行機事故の話はなかったが、一般のブログやQ&Aのページは白楽と事故のエピソードがほとんどだった。どうも傷が癒えて芸能活動を再開する際に、事故の生き残りであることをアピールして炎上したらしい。 「うーん」 今まで気に停めなかった昭和の大事故が夏奈の胸に重く刺さる。 「佐倉さん、どうして飛行機に……わからない……」 続く
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