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さて次の日。トラックが搬入され、前もって掘ってあった穴に、大樹の桜が植えられた。植え替え作業は、喫茶店の店主が一人で行った。一見すると、喫茶店の店主である彼が作業着を着て桜を植えているのは少しおかしな光景だった。
植え替えが終わった後、彼は桜を見ながら、社長にこう尋ねた。
「この桜は、何年ここに立っている思いますか?」
社長は一大事業が終わって、晴れ晴れとした顔でこう答えた。
「ここは条件のいいところだからな。日当たりもいいし、水はけもいい。10年、100年、もしかしたら1000年生きてくれるかもしれないな」
「素晴らしいです。僕が生きている間中、僕があそこで店を構えて居る間中、そして僕が死んだ後も、あそこでずっと桜が根付き続けているんですね」
ところで、今年も18歳の女性が行方不明になった。
<了>
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