第1話

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第1話

「申し訳ないが婚約を解消して欲しい」 「承りました」 生まれた時からの婚約者であった王太子殿下から婚約解消を申し込まれてしまいました。 なんでも、私の義妹であるリリーと恋仲になったそうで、私ではなくリリーと婚姻をしたいそうです。公爵家の令嬢なら、だと考えたのでしょう。リリーは義母の連れ子ですが、公爵家と正式に養子縁組を交わしておりますから実子同然の権利を有しております。 私といたしましても、殿下とリリーの仲は既に存じておりましたから、快く承諾いたしました。 だって、そうでしょう? 幾ら政略とはいえ、あれほど見せつけられてきたのですよ? 婚姻後に愛人を持つにしても、もう少し誠実さを見せて欲しいものです。 私に気を遣ってくれてもいいではありませんか。表面上だけでも取り繕う事ができなかったのでしょうか?王族としても、一人の男性としても、いいえ、人としてあるまじき行為です。 その点、両陛下やお父様が外交で国に居ない間に婚約解消を言い渡し、手続きを終了させてしまうのですから、御自分の欲に忠実な方ですこと。 これから苦難の道を歩まれるでしょうが頑張ってください。 私はその門出を祝福いたしましょう。 御安心ください、元婚約者が近くにいると何かと面倒でしょうから、私はこの機に、母の故郷に行きますわ。 あら? ご存じありませんでした? 私のお母様はこの国の人間ではありませんわ。 ふふふっ。御心配いりません。お母様の国には親族の方もいらっしゃいますから。 ええ、それではごきげんよう。 あれから三年。 月日が経つのは早いものですね。 殿下と別れた後、直ぐに国を立ちました。 学園長には最後の挨拶をさせて頂きましたわ。 こればかりは、殿下に退をさせる訳にはいきませんからね。 随分驚かれていらっしゃいましたけど、理由を告げると大層憐れんでくれました。 別に『お可哀そう』の身の上ではないのですけれど……。 寧ろ、私あなた方をですよ? 王太子殿下の名のもとにサクサクと事が進みましたわ。 よほど私を追い出したいのでしょうか? それとも早くリリーと結ばれたいからでしょうか? まあ、どちらでも構わないのですが。 お陰で早く出国できましたから。 その後は予定通り、お母様の祖国に向かい、おじい様や伯父さま達に面会致しましたわ。 おじい様達は、私との再会に大変喜んでくださって、を快く受け入れてくださいました。その分、王太子殿下たちの所業に大層怒り心頭でしたわ。お父様たちが私を取り戻しに来られないように処置してくださり、私は爵位を賜る事になりました。『公爵位』です。 お母様の国は女性でも爵位を継ぐことが出来るのです。 大国は女性進出も活発でいらっしゃいます。 最初は、伯父様の養女にと望まれましたが、流石にそれはお断りさせていただきました。殿になる訳には参りません。 なので妥協案として『女公爵』なのです。 女公爵になった以上は、新たな祖国となった帝国のために働く所存です。 皇帝である伯父様は城務めを希望されておりましたが、私は語学に堪能ですから外交の職に就くことにいたしました。公爵令嬢であった頃から殿下のパートナーとして外交にあたっていましたからね、ノウハウがあるのです。 そういった理由で、この三年を外交に明け暮れておりましたわ。妃教育の一環が形を変えて活かせるのですから、王太子殿下達が知れば歓喜してくださるはずです。 教育は無駄ではなかったと。
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