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「ちょっと、すまない」と、他の騎士たちに行っているかのように、顔の前に手を垂直に立てながら、こちらへと向かってきた。
「なんか用か?」
テッドは、首にかけているタオルで汗を拭いている。アニエルカが見上げるほどの体躯と燃えるような赤い髪。程よく日に焼けた肌と、上下する喉仏。
「ああ。用が無ければわざわざこんなところにまでお前を探しに来ないだろう?」
アニエルカがそう口にするほど、テッドは馴れ馴れしい。だから、あらかじめ言葉で表現して距離を取っておく必要がある。
「いや。急にアニエルが俺に会いたくなった、ということもあるかもしれんだろう?」
やはり馴れ馴れしかった。そして、このような言葉が返ってくることもアニエルカの想定内である。
「どの口がほざいている?」
腕を組み、青い目を右側に寄せて、ジロリとテッドを睨んだ。
「冗談だ。そう、睨むな。可愛い顔が台無しだ。これでは嫁の貰い手がいなくなる。そんときは遠慮なく俺のところにこい」
アニエルカは深く息を吐いた。このテッドもディーターと同じように扱いづらい男である。そもそも、アニエルカにとって扱いやすい男は、素直な部下たちだけである。それ以外の男は、いろんな意味で、それぞれに扱いにくいのだ。
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