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 ここで言うただの変死とは、人間が人間の力によってその命を奪われること、もしくは人間以外の動物の力によって、または自然界の力によって、命を奪われることを指す。 「今回の変死には、魔術師が絡んでいるものと思われます」  アニエルカはルーベンから視線を逸らさずに答えた。だが、彼はじっとしたまま動かない。 「団長。俺のほうからも一つ、よろしいでしょうか」  そこでテッドが口を挟む。これにはアニエルカも戸惑いを隠せない。テッドは何を言うつもりなのか。 「なんだ? もう、嫌な予感しかしないのだが」  より、ルーベンの顔が沈んだように見えた。はっきりとした表情は見えないため、アニエルカがそう感じただけである。 「実は……。残留魔力が関わっている死体は、以前にも何件かあったのです」  本来であればアニエルカが報告しなければならないこと。先ほど、ディーターから聞いた内容であり、アニエルカはそれをテッドにも伝えていた。  テッドはアニエルカがこの状況では言いにくいと判断したようだ。変なところで空気を読むのがうまいのは、少しだけ癪に障る。 「まあ、私は聞いてないがな」  やはりルーベンは顔を隠したまま答えた。 「まあ、言っておりませんでしたので。我々の仕事は死体の確認と、そしてそれを身内に引き渡すことですから」
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