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「ネリウス殿、この死体の残留魔力を調べてもらいたい」  アニエルカは変死体を、腕を組みながら見下ろしていた。このような状況であっても、頬の筋肉をひくりとも緩めない。 「ディー」  ディーターが言った言葉がなんなのか、アニエルカは瞬時に理解したが、わからない振りをする。 「オレとお嬢の仲だろ。そんな家名で呼ばれたら、距離を感じちゃうじゃないか。だから、オレのことはディーと呼んで。前から言ってるだろう?」  ジロリとアニエルカは彼を睨みつける。 「仕事中だ」  アニエルカの言い分は正しい。仕事中であるなら、公私混同すべきではない。まして、彼は昔のアニエルカを知っている唯一の人物。 「仕事中だからだよ。多分、これはお嬢が考えている通りの案件。オレはお嬢と組んでこれの犯人を捕まえたい」  ディーターの口元は、キリリと引き締まる。アニエルカが考えている通りだとしたら、変死体の死因は魔術によるものだ。  魔術は魔法とは異なる。自然の力とは違う、不思議な力と術を用いて、現象を起こす。  魔法では人を殺せないが、魔術ではそれができる。できるといっても魔術を扱える者が誰でも簡単にできるわけではない。複雑な術式を用い、それを展開して発動させる。術式を確立して展開させるのが難しいと、魔導士たちは言っている。
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