2.

1/6
前へ
/37ページ
次へ

2.

 アニエルカは同じ第二騎士団である第一班の班長であるテッドを探していた。  騎士団の屯所は大きく二つの建物からなっていて、一つは団員たちが訓練や待機に使う建物であり訓練棟と呼ばれている。もう一つの建物は、班長以上の騎士が事務的な作業を行うための机が並べてあったり、団長以上となればそれぞれの個室があったりとする事務的な建物、通称事務棟と呼ばれている建物だ。  テッドは事務棟にいるかと思っていたのだが、その場にいた第二班班長のジェイに尋ねると訓練棟にいると言う。 「あのテッドは訓練バカだからなぁ」  と、豪快に笑っていた。  そんな訓練バカのテッドは他の騎士たちと混ざって、自主訓練をしていたようだ。彼を見つけたアニエルカはその名を呼ぶ。 「テッド」  女性の少し高いキーの声は、この訓練場ではよく響く。すぐに名を呼ばれたテッドは振り返り、アニエルカに気づき、軽く笑んで手を振る。そのような仕草を見せているテッドであるが、年はアニエルカよりも十歳以上は年上で、四十に手が届く壮年の域に達している男性である。  だからといって、アニエルカが手を振り返すようなことはしない。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加