第1話

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第1話

「申し訳ございませんが王妃様、それは側妃である私のお仕事ではございません」  にっこりと微笑んでお断りすると、目の前の王妃様はリンゴのように真っ赤な顔でボロボロと泣き出してしまわれました。 「ど、どうしてそんな酷い事をいうの?」 「王妃様、酷くはありません。王妃主催のお茶会に側妃の私が采配するのはマナーに反しているとお伝えしているのです」 「そんなこと私は気にしないわ!」 「王妃様が気になさらなくとも周りが気に致します」 「で、でも……」 「私は王城に来て間がありません。たとえ王妃様の茶会に準備が出来たとしても、王家に相応しい装いなど到底出来るものではございません。なにしろ、私は妃教育を受けておりませんので。できるのは高位貴族の令嬢程度の催しでございます」 「ディアナちゃんの茶会はとても素晴らしいと評判だったわ……だから……」 「お褒め頂きありがとうございます。招待客の皆さまも私の()()()()()()という事もあって、細かい処は大目に見てくださっただけのことでございます。王妃様の催す茶会も()()()()だとお聞きしました。生憎、私は実家に一度戻らなければなりませんのでご参加できませんが、どうぞ王妃様らしい催しをなさってください」 「あ……」 「それでは、これで失礼いたします」  部屋から出ると王妃様の鳴き声が聞こえてきましたが、ガン無視です。  私に準備させて自分がやったことにしようとする魂胆がみえみえです。腹芸できない王妃ってこの世にいたんですね。もっとも我が国だけでしょうけど。  案の定、王妃の茶会は悲惨な結果で終了したようです。  なので王城に戻るのを一ヶ月程遅らせました。今頃、王妃様が国王陛下に泣きついているでしょうから巻き込まれるのは御免です。王妃様のこれまでの言動を考えて私が手伝わなかった事を責めて私のせいにするのは目に見えていますからね。最近では陛下も目が覚めてきたのか王妃様を御諫めする側に回っているようですけど……遅すぎですよ。まあ、10歳以上も年下の私相手に罪を擦り付けるの流石に無理があるというもの。王妃様はそこら辺が分かってないようですね。年の近い女官達と違って私は「未成年」なんですよ?
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