足りない

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 小学校五年生の時からいい学校に入るために塾に通いだした僕は、友達と遊ぶことも、部活動をすることもなく、高校二年生の今までずっと勉強している。今までそれに疑問を持つことなく塾に通っていたけど、最近僕は勉強する意味を失っていた。いや、意味なんて最初からなかった。僕はただ母に言われるがままに勉強していただけだった。それでも勉強を続けられていたのは、いつの間にか勉強をする理由が変わっていたからだろう。 「宮田君、めずらしいね。スランプ?」  今まで話したこともない鈴木君がいきなり話しかけてきた。 「いや、ちょっと最近集中出来なくて」  鈴木君は畏まった表情を作ろうとしながらも、少し嬉しさが漏れだしたのか口元が弛んでいた。 「僕達、ライバルなんだから、そんなんじゃ困るよ」  鈴木君は心にもないことを僕に助言しながら去っていった。鈴木君はこの塾でいつもナンバー2だった。だから今まで僕の顔を見ようともしなかったし、ずっと避けられていた。だから今回大幅に順位を落とした僕を笑いたかったのだろう。
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