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この塾では毎週末に毎回テストがあり、順位が発表される。その順位は親にもすぐに送信されるから、今回一位じゃないことがばれて、今頃家では母が怒り狂っていることだろう。
母は学校でも塾でも一番じゃないと許してくれなかった。だから僕は今まで一番を取るために一生懸命頑張ってきた。中学三年生の時、一度だけ塾をさぼったことがあった。あの時の母はひどい怒りようで、僕は家で正座させられて八時間以上ヒステリックに怒られた。
あの時母は怒っている時間ずっと床をウエットティッシュで拭いていた。そのうち、ウエットティッシュはすり切れ、床もはげてきたけど、そんなこと気に留めることなく母は怒り続けた。怒る時間があれば勉強するほうが効率的だと思うけど、怒りの形相で我を失っている母にそんなこと言えるはずもなく、僕はすり切れたウエットティッシュをぼんやりと眺めながら、ただ言われるがまま反省した。たぶん、今日家に帰ればあの時どころの騒ぎではないのだろう。
塾への帰り道、公園の横を通ると、桜が咲いているのが目に入った。僕は見ないように目を逸らすと、家へと急いだ。桜の花はついこの間まで、大好きな花だった。
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