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第7話元婚約者side
そんなバカなと思った。
ありえないと思った。
精霊との結びつきは王家であってノノミヤ公爵は関係ないはずだった。
偶々、ノノミヤ公爵家に『精霊の愛し子』が産まれただけだと思っていたのに……。
根本から間違っていたとは。
まさか、ノノミヤ公爵家自体との結びつきあっての王国だったとは。
ノノミヤ公爵家以外の全ての国民が喜んだであろう王太子と聖女の結婚。今では見る影もない。それでも取り止める事はなかった。
精霊からの直々の『祝い』なのだ。
中止にして、これ以上の厄災が降りかかるのを恐れた。
様々な人々の様々の企みを知ってか知らずか全てを台無しにしてくれた精霊と愛し子。そして、ノノミヤ公爵家。
彼らの関係を今更知ってどうなるってものでもない。知るには遅すぎた。それでも彼らの結び付きを知りたかった。
できうる限り精霊とノノミヤ公爵家の情報を集めた。分かる事は多くない。それでも分かった事はあった。関係する資料はすぐに出てきた。
元々、ノノミヤ公爵家は王国が出来る遥か昔から『古代精霊信仰』の家系だった。
今は神事を行っていないが、領内は精霊信仰が盛んだとある。
とあるページをめくると絵があった。
言葉がない。
そこに載っていたのはノノミヤ公爵姉妹に生き写しの二人の女性。いや、姉妹をもう少し幼くした感じだ。古代の神職姿の少女はミコト・ノノミヤだと言われても納得してしまう。
それと――
「……冗談だろ」
精霊王らしき存在の隣りにいるのは『精霊王の末姫』だが……似てる。イツキ・ノノミヤに。
「まいったな……」
文献には「悪しき人間から精霊王の愛し子である末姫を守った巫女」とある。
恐らく、巫女とは今で言う聖職者の事だろう。
「……はぁ」
最悪だ。
精霊王の契約者は間違いなくこの人間の少女だ。多分、ノノミヤ家の先祖だろう。
『お断りします。私は貴男と再び婚約するメリットが見受けられません。国の為? おかしな事。国のために婚約解消したのでは? 国が亡んだら困るだろう? 一向に困りません。それに我がノノミヤ公爵家にとってこの大地がどこの国名になろうと大した問題ではありません。この国が建国される遥か昔から居続けているんですから。後から出来た国が勝手に“ノノミヤ家の所属は自分達にあると”と宣言しているだけなんですから。』
ミコト嬢の言っていた事は本当だった。
溜息が出た。
「これは……完敗だ」
公爵家と愛し子を体よく利用してやるつもりが裏目に出た。
ただの人間が勝てる相手じゃない。
王国は喧嘩を売る相手を間違えた。
いや、利用すること事態許されない相手だったんだ。
相手は、精霊の王女と古き教皇。
こんな相手にどうしろと。
そもそも勝てる訳がない。
敵を見誤った結果だこれだ。
王国は過去の国々と同様に歴史に名を刻むだろう。
愚かものの国として――
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