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番外編 王太子の懺悔
「すまないイツキ……すまない、僕が悪かった……だからもう許してくれ……イツキ」
イツキとの婚約解消がこんな結果になるなんて思わなかった。
あれから数年。
未だに国があること自体が奇跡だった。
いや、違う。
精霊の怒りを恐れた各国が我が国を見捨てた結果だ。
「お願いだイツキ! 許してくれ!」
今日も王宮の祈りの場で許しを請う。
あの日から全てが狂った。
民からの怨嗟の声が聞こえる。
貴族からの信頼も失った。
皆がこう呼ぶ。
愚かな王子。
恋に狂った王子。
国を破滅させた王子。
僕だけじゃない。
恋人も同じように呼ばれている。
王子を誑かした毒婦。
国を傾けた女、と。
僕と愛し合ったせいで周りから非難の的となってしまった。神殿は「聖女がいるお陰でこの程度の被害ですんでいるんだ」と叫んでいるが、それが余計に民からの恨みを買っている。
何故、あれほど支え尽くしてくれたイツキを蔑ろに出来たのか自分でも分からない。
後悔した。
生まれて初めて後悔した。
祈りの場で毎日嘆き許しを請う。
「イツキ! すまなかった!」
祖国は他国から見放された。
国を捨てて逃げ出そうにも国境を越えた瞬間に元の場所に戻ってしまう!
「イツキぃぃぃぃ!!!」
未来を憂えて自殺した者もいる。
なのに!
なのに死ねない!
死ぬほど苦しいのに狂う事も出来ない!
「頼む!助けてくれ!!!」
これからはお前だけだ。
イツキだけを愛すると誓う。
だから、だから僕だけは許してくれ!
『許すわけないだろ、クズが』
聞こえた声。
それはイツキの声ではない。
『汚物共は苦しんで生きろ』
ああああ!
あの声は、ミコト・ノノミヤ公爵令嬢!
イツキの妹だ!
貴様の返事など求めておらん!
イツキだ!
イツキをだせ!
イツキなら、あのお人好しな女なら僕を許すんだ!
馬鹿みたいに人が良いからな!
早くイツキを出せ!
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