第1話結婚前1

1/1
482人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

第1話結婚前1

 結婚式の一ヶ月前。  慌ただしく結婚準備をしていた日にそれは起こりました。   「私とジョアンは愛しあっているのよ!」  我が家に突撃してきた招かれざる客。  燃えるような赤い髪をした印象的な女性が玄関先で私に向かって怒鳴りつけてきたのです。   「ちょっと!聞いてるの!?」 「……貴女様何処のどなたですか?いきなり屋敷にきて名乗りもしないなんて有り得ません」  私に代わって侍女頭のマーナが話しかけました。マーナもこの礼儀知らずの女性に呆れております。 「なっ!? 私を知らないの?」 「全く存じ上げません。当家に来られる客人は貴女様のように無礼で礼儀を弁えない方はいらっしゃいません。グリア侯爵家からの紹介状をお持ちのようですが当家では侍女の求人募集はしておりませんのでお帰り下さい」 「誰が侍女の求人よ!」 「違うのですか?」 「当たり前でしょう!私はこの家の女主人になるのよ」 「おかしなことを仰います。当家の御令嬢はお一人のみ。ここにいらっしゃいますフアナお嬢様唯一人でございます。」 「ジョアンが伯爵家を継ぐんでしょう?だから私が未来の伯爵夫人なのよ!」  この女性は大丈夫でしょうか?  私と結婚するからこそジョアンは伯爵家の爵位を得る事が出来るといいますのに。  もしかして知らないのでしょうか? 貴族では常識の事なのに……平民なのかしら?それならば知らなくてもおかしくはありませんが……。 「それはアウストラリス伯爵家を乗っ取るという事でしょうか?」 「乗っ取る?あんた何言ってんの?ジョアンが跡継ぎでしょう!だからさっさと出ていくように言っているのに!」 「その場合、伯爵家から追い出されるのはジョアン様の方です」 「あんたさっきから何訳の分からないこと言ってんのよ!未来の伯爵夫人に失礼なこと言ってタダで済むと思ってんの?あんたなんか真っ先にクビにしてやるんだから!」   「なるほど。よく分かりました」 「漸く理解したのね」 「はい。貴女様が脳の病に侵されている人物だという事は理解できました。当家は病院ではありませんので、お引き取りください」  マーナの言葉で先ほどから控えていた護衛達が赤毛の女性を連行していきました。何やら騒いでいましたが一体何をしに我が家に来たのでしょう?    数日後、その謎が解けました。   「フアナ!お前との婚約を破棄する!」    婚約者のジョアンが伯爵家を訪れて婚約破棄を宣言なさったのです。  
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!