僕たちの足下には死体が埋まっている

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 四年の歳月の中でツボミはさらに綺麗な女の子に成長していた。肩まで伸びた髪の毛は綺麗に整えられていて、スカートから伸びる健康的な脚があの頃のツボミにはなかった女性としての魅力を引き立たせていた。  ツボミはすぐにクラスの人気者になり、彼女の机の周りにはいつも誰かの姿があった。その中には喜多原の姿もあっていつもの凶暴な顔とは別人のような顔を貼り付けてツボミと話しをしていた。  僕はできるだけツボミの視界に入れないように日々を過ごした。何度かツボミの方から僕に話しかけてくることもあったが、全て聞こえないフリをし続けた。 可憐な女の子として成長したツボミにだけは、僕がいじめられているという事実は隠さなければならなかった。  そんなある日、いじめの主犯格である喜多原が僕を近くの河原に呼び出した。いつも彼の周りにいる取り巻きの姿はないようで、僕は喜多原と二人きりで向き合っていた。   「お前さぁ、ツボミとなんかあんのか」  彼は坊主頭をカリカリと掻きながら言う。黒く日焼けした額には、皺が何本も走っていた。喜多原がツボミの事を好きなんだろうということは予想はついていたから、僕は喜多原が望んでいそうな答えを口に出した。   「何を勘違いしているのかは知らないけど、なんの関係もないよ。ただ昔家が近かっただけで別に仲が良いとかそう言うんじゃない」 「じゃあなんでツボミは毎日お前の事を見てんだよ」  僕の胸にチクリとした痛みが走る。そんなこと僕は知りたくなかった。 「知らないよ。気のせいじゃないの」 「あ? お前ごときが俺に口答えすんのかよ。調子のんな。てめぇ」  彼は大股で歩み寄ってくると僕の胸ぐらを掴み、お腹にひざ蹴りを二発入れて近くの茂みに投げ飛ばした。頬を木の枝がかすめるとそこがパックリと割れて血が溢れてくる。口の中に鉄を舐めたような不快感が広がった。 「寝てんじゃねえ。立てよ」  喜多原は強引に僕を立たせて引き寄せると、今度は自慢の坊主頭を使って僕の額に思い切り頭突きをした。鈍い衝撃が頭の中に響き、世界がひっくり返ったような痛みがやってくる。  項垂れる僕を引き寄せ、喜多原は耳元で囁いた。 「まあ安心しろよ。あんな女、一回ヤったらすぐにお前に返してやるからよ」  次の瞬間には弾けたように僕の身体が動いていた。喜多原の身体を突き放すと、僕は握り拳を力一杯彼に向けて突き出した。パンチとも呼べないぎこちない反撃だったが、予想もしなかったであろう僕の攻撃に喜多原は大きくバランスを崩した。
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