祝福された双子

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祝福された双子

 僕たちは、双子の兄妹だ。  僕たちは、祝福された双子だ。  僕が、君の事を知ったのは、僕が成人した時だ。  成人の報告を教会に告げに行った時に、司祭様から教えられた。  僕は、素顔を隠して、君の前に跪く。僕と同じ顔を持つ君は、僕を見て可愛く笑う。  君は、この国の女王だ。僕は、君に仕える。  王国は、荒れている。  前国王と王妃が、民を苦しめ、特権階級だけを優遇していた。前国王は、桜に祝福された。教会が認めている。祝福された国王だ。  王国では、双子は神に祝福された子供だと言われている。  僕たちは、運命の双子だ。桜に祝福された双子だ。  僕たちが産まれた日に、国中の桜が狂ったように咲いた。そして、散った。僕たちが離れて暮らしていた理由だ。それが僕が桜を好きになった理由だ。両親が君を育てたのにも理由がある。君が女で僕が男だからだ。  僕は、教会が運営している施設で育った。食べるのに困ることは無かった。裕福ではなかった。僕たち家族のシンボルが、教会の庭に植えられている桜の木だ。桜が咲く季節に皆で集まって、食事をする。施設での年に1度の食事会だ。楽しかった。家族の皆が笑顔になる。年に一度だけの豪華な食事に家族のテンションが上がる。  桜を愛でながら、家族たちとの会話と食事を楽しむ。家族が笑顔になり、僕の好きな桜を愛でる。  君は、15歳の時にクーデターを起こした。  隣国の王子との婚約がきっかけだと言われている。前国王と王妃は、誰もが知っている”クズ”だ。僕ではなく、娘となる君を引き取ったのも、婚姻を餌に貴族から金を巻き上げることができると考えたからだ。婚姻も、君の幸せでも、王国の未来でもなく、持参金に目がくらんだからだ。  さらし首になった両親を僕は、王宮の広場から、君は王宮から見ていた。  両親だと知った今でも何も感じない。僕は、王宮から吊るされた両親を見ている君の笑顔に見惚れた。  君が生きていて、笑っていてくれる事実が嬉しい。僕は、君の笑顔を守る。そのために、祝福を受けた。君の笑顔は、僕への祝福だ。  僕と君は、”祝福された双子”だ。国花である桜が出産を祝った。クズな両親は、僕と君が”祝福された双子”だと知られる前に、僕たちを分けた。自分たちの立場を僕と君に奪われるのを恐れた。 「そこの・・・」  君が、僕に声をかける。 「はい。女王様」  君は、僕に専属の召使に鳴るように命令する。  僕は、君の望むままに君の召使になる。  僕は、君の笑顔を守る。家族を守る。君を守るのは僕だ。  君が望むから、僕はなんでもできる。  君が望んだから、僕は教会を潰した。  君が望むから、教会に残っていた家族を殺した。  君が望むから・・・。  君の心は壊れてしまっている。僕は、君の心に寄り添う。僕にしか出来ない”祝福”だ。  僕は、君の味方になろう。  君が笑ってくれるのなら、僕は”何者”にもなれる。  僕は許された。僕が許された。僕だけの”祝福”だ。  今年は、どこで君と桜を見よう。  僕たちは”桜に祝福された双子”だ。 ---  私は、女王。  私を隣国に売ろうとしていた。嫌いな父王を捕えて皆の前で吊るした。母も同じ様に、吊るした。  私が女王になれば、嫌いな事をしなくてよいと言われた。  嫌いな物を見なくて済むと思った。笑って過ごせると思った。  でも違った。  王国が嫌い。貴族が嫌い。役人が嫌い。教会が嫌い。侍従が嫌い。騎士が嫌い。民衆が嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。嫌い。  私が産まれる時に咲き乱れた桜が嫌い。  桜が咲かなければ、私が祝福されることなど・・・。なかった。だから、桜が嫌い。桜に呪われた。桜が嫌い。桜に呪われた。桜が嫌い。  何も楽しくない。  教会に隣接している施設で、私の嫌いな桜を囲んで食事会が行われていた。私の嫌いな桜を囲んで、私が望んでも食べられない。温かく美味しい料理を食べる。許せない。許せない。許せない。許せるわけがない。  壊してしまおう。  楽しくないから壊してしまおう。壊した時にだけ、私は許せる気持ちになれる。呪いが祝福に変わる。楽しい。嬉しい。桜が好きになれる。壊れた時にだけ、桜が好きになれる。壊してしまおう。壊れろ。壊れろ。壊れろ。  桜なんて嫌い。  私を祝福した。私を呪った。桜が嫌い。  桜を崇める民衆も教会も嫌い。  私は笑っていられる。笑って過ごせる。
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