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Prologue.
あの日の後悔が頬に触れた。
頭上の大海を悠々と泳ぐ白と桃の斑。透けた鱗が乱反射して、小さな一重が生命の終わりを辿る。そんな鮮やかな一瞬に、反射的に目を逸らした。
胡粉色の海底に散らばった死骸を悪びれもなく踏みつけていく子どもを見た。そうして、密かに「もっと踏み荒らしてはくれないか」と願う。
小さな箱庭で世界を知らぬ無垢な子ら。ブランコの立ち漕ぎで視界に無数の空を溢れさせた頃の二人が映る。
白と桃を彷彿とさせる女性(ヒト)。
気分に左右されて、魅入られた者を引っ掻き回す女性。
桜が嫌いだ。
特に一重から八重まで咲く、白妙が。
飛び降りをしたひとりの子どもが、ブランコの反動を上手く使えず転倒した。砂に塗れたひざ小僧を見せ泣き喚く。「ママァ、パパァーッ」がお決まりの。
もう何回目の絆創膏なことやら。
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