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どこがいいんだろう。
私はその後、ずっと、久保田さんを観察していた。
仕事熱心で、いつでも同じような服を着て、何が楽しいの? 早坂さんが変わり者なだけよね。他にも可愛い子がいっぱいいるって、私のことでしょ。
でも、今、恋人がいないのは私の方なんだ。
会社の帰り、ふと、花見の場所へ寄ってみた。あの時、もっと、早坂さんと喋っていれば、好きになってもらえたかも。
もう、桜はほとんど散ってしまい、地面や水面はピンクになっている。花見の人もいない。宴会をしている人たちは少しいるけど、桜なんて見ていない。
宴会で使った場所はもうわからない。どんな桜の木だったろう。
『ソメイヨシノは同じ個体』
『みんな同じに見えて』
確かに同期の子たちと似たような格好になっちゃったけど、モテたいから、情報収集して、頑張っただけなのに。私が一番、可愛いかったよねえ。
風が吹いて、一斉に花びらが舞い落ちてくる。
きれいなのに。
花の命は短くて。アニメの歌詞であったフレーズを思い出す。
久保田さんは桜とは違うんだ。
桜の木の表面は意外とゴツゴツしている。私は力を込めて叩いた。
また、一斉に花びらが舞い落ちてきた。
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