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川沿いに桜の並木が続き、淡いピンクが視界いっぱいに広がる。
満開だった。
「わー、きれい」
私はぴょんぴょん跳ねた。そばにいる山崎の視線を感じる。
ねえ、私、可愛いでしょ。
会社で花見宴会が行われることになり、場所取りをすることになった。花を見ながら待つだけって、なんていい仕事。おまけに同期で一番イケメンの山崎と一緒。テンションが上がる。
「山崎さん、ブルーシートを」
手を差し出したのは先輩の久保田さん。場所をよく知っているからということで一緒に来た怖いお局だ。
久保田さんは山崎から受け取ったブルーシートを敷き始めた。慌てて、山崎が手伝う。私が手伝うまでもなく、四枚のシートは広げられ、端を石で押さえられた。
久保田さんは四枚のシートの真ん中に座った。
私と山崎はその前に座る。息が詰まりそうな配置だ。
「場所取りなんてしているの、うちの会社だけですかね」
山崎は平気で久保田さんに話しかけている。
「コロナもあったし、今どき、花見で宴会っていうのも古いでしょ。でも、部長はここの桜が好きだから、山崎さんや堤さんに見せたかったみたい。あ、自由にしてね。寝っ転がっても構わないから」
そう言うと、久保田さんは黒いパンツ姿の足をぐんっと伸ばした。
白いシャツに黒い髪、もし、蝶ネクタイをつけたら、そのまま、高級レストランのウェイトレスができそうだ。
「じゃあ、そうさせてもらいます」
山崎が足を伸ばすのを見ながら、私はちょっとだけ足を崩した。膝丈のスカートだから、自由に足を伸ばすことはできない。
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