桜の季節に君と会う

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 そして、今年も同じ現象が起きた。  彼女は毎年、この季節に姿を見せた。  今までは丈流の地元だった。  遠く地元を遠く離れた、この大学の地であっても夏生と会うとは思わなかった。  彼女は、桜と丈流に縛られているのかもしれない。  桜に囚われた幽霊なのだと丈流は思った。  だからこそ、桜が咲いている時期は丈流にとって辛い時期でもあった。  夏生は桜が好きだった。  夏生は桜の花が好きで、桜の開花する時期に必ずと言っていい程、桜を見に行くことが多かった。  あの時、丈流は何をするべきだったのか今も思い悩む。  しかし、結局、何もできなかっただろうと思う。  夏生は、桜の美しさに惹かれていただけだ。  その美しい死に方にも惹かれていたのだ。  彼女の死が桜と結びついている以上、桜の花を見るたびに思い出してしまう。  その苦しみから逃れることはできない。  その事実が、丈流を苦しめ続けていた。  話を聞いた悠太と拓海は、しばらくの間、沈黙を保っていた。 「そういうことだ。だから、僕は桜が嫌いなんだ」  丈流は、夏生のペンダントを手に一人夜桜の間を歩き始めていた。  夏生の墓前に向かって。
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