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講義室の中で生徒達が盛り上がっていた。
その盛り上がりをよそに、一人の少年は教室の窓から空を見ていた。
大学のクラスの中で一人だけ浮いている存在がいた。
陰りがあった。
いつも暗い表情をしてはいたが、顔立ちは良い方だ。
黒髪と黒い瞳をしている。
肌の色は白い。
細身だが背丈は高い。
少年の真中丈琉といった。
彼は無口な少年だ。
いつも一人でいることが多い。
話しかけても、あまり返事もしない。
だが、悪い奴ではない。
むしろ、誰よりも優しい性格の持ち主である。
ある時、彼の財布に献血カードがあるのを友人達は知った。
聞けば高校生の頃から献血をしていたという。
求められれば成分献血、全献血どちらでも応じていたらしい。
彼はいつも一人で行動していた。
休み時間も授業中もずっと窓の外を見て過ごしていた。
そんな丈流を同級生は遠巻きに見つめていた。
放課後になり、丈流は帰る準備をしていると突然声をかけられた。
振り返ると、そこには同級生の少年の姿があった。
茶髪にピアスという派手な格好をした男だった。
名前は高坂悠太といい、大学に入ってから知り合った友達の一人である。
見た目はかなりチャラい感じなのだが、意外にも勉強ができる。
頭が良くて運動神経も良いという万能タイプであった。
悠太は人懐っこく笑顔を浮かべながら言った。
「なあ今夜、皆で花見に行くんだけど、お前も来ないか?」
「……遠慮しておくよ」
そう言って丈瑠は再び帰り支度を始めた。
すると、今度は別の男子生徒がやってきた。
こちらは長身痩躯の男だった。
名前は新垣拓海と言い、悠太とは中学校からの親友だ。
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