花の浮橋がかかる頃に

　「わたし、あの時、二人で小川の橋に着いた時、あの子の見て！って声を聞いたかもしれないの！」
　「落ち着いて」
　「わたしが気付かなかったから、わたしが、わた、わたしが殺しちゃったかもしれないの……！ああ！ああ！ああああああああ………」

　何も言えずに、僕は妻の背中を撫でてそのパニックが収まるように祈るしかなかった。ともすると、叫び出したくなる自分の喉を無理やりにも押さえて。