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「さっき、僕が桜の咲いている中庭に行かなかったこと、桜が苦手だって言ったこと……何だと思っちゃっただろ」
「は、い、……」
「僕の実家は酒蔵なんだけど、いつも忙しいんだ。好きなのは、あの杉玉を店先に吊るしてある風景だけ。あれ、可愛いだろ。でもあとはいつも忙しくて構ってもらえなかった。桜がきれいと言う季節だって新酒の出荷の追い込みだったりして、花見とかでみんなが賑わって楽しそうにしているのを見るのがすごく嫌いな子どもになっちゃったんだな。そのまま大人になってもこの季節は胸の中がザワザワするんだよ、だから、苦手、と、言うより嫌い、かな……」
「そうだったんですか」
人と言うものは本当に見かけだけでは全くわからないものを持っている……そう思った。
「でもそれも個性ってことで良いと思います!」
「個性か……。そうだな、君が言うならそう思うようにするか」
バンビ先輩は少しだけ笑っていた。
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