夏休み

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「貴斗…お前ほんとにこの人お前の相棒なの?」 「絶対相棒とか嘘だろ」 「俺は信じないよ?」 え、何、私がここで嘘つく理由ないでしょ普通に考えて。 「うるせーな!相棒つったら相棒なんだよ!小学校と同じだと思うなよ!」 小学校と同じだと思うなよ?どういうこと? 「貴斗、中学デビューしたってこと?」 考えるより先に言葉が飛び出た。 見上げながら目を合わせること数秒。 「ちょっと違うけど…まぁいいや、いつか話さないとって思ってたから。でもこいつらの前で話したくないから今日の夜でいいか?電話するから」 え、なんか怖…と思いつつコクンと頷けば貴斗はホッとしたように笑った。 「えー高海君ひま?一緒に遊ぼーよ」 「スタイルめっちゃいいなー足細っせぇ」 ナンパか、とツッコみたいのを必死に抑えスッと貴斗を盾に距離を取る。 「すみませんねーこいつ俺以外懐かないので〜。さっさと諦めてくださぁーい」 嬉しそうにニヤニヤする貴斗を見てるとなんか、少し、からかいたくなってしまう。 さっきとは打って変わって、スッと前に出て貴斗の友達に笑いかけた。 「やっぱり俺も一緒に遊んで良いですか?貴斗の友達ってことは実質、俺の友達的なとこあるんで笑」 某アニメのジャイ〇ンみたいなこと言ってね?とか思ったけど皆は大歓迎ー!!って感じで笑ってくれた。 ――― そこからはめちゃめちゃカオスだった。 ゲーセン行けばどんだけ使うのってぐらいクレーンゲームにお金つぎ込むし。 ノリで撮ったプリクラは貴斗が全部私の隣を死守してくるからそれ見て皆は爆笑するし。 お腹減ってマクド〇ルドで軽く食べようってなったのに皆買ったのはバーガーセット2つだし。 少し騙してるっていう罪悪感はあったけど、それでも楽しかった。 自分が男に生まれてたらこんな感じだったのかな… 夏の高い陽が傾き始めた頃、解散になった。 LINE交換しよ、と言われたけどそれは貴斗に申し訳ない、と思い多少無理があったけどスマホ持ってないと嘘をつかせてもらった。 他の人達は帰る方向が違うらしく、私の方面は貴斗だけだった。 「今日…ごめんな、しんどかった…よな?」 2人で無言で歩いてしばらくした頃。 おもむろに貴斗がそう呟いた。 「いや、全然、むしろ楽しかった。騙してるっていう罪悪感はあったけど自分を取り繕う必要ないって楽だなーって思ったよ」 言ってから凄く後悔した。 【取り繕う】という言葉に反応した貴斗の顔は傷ついたようなものだったから。 「やっぱり今の結優は全部をさらけ出してないの?俺そんなに頼りない?まだ結優の居場所にはなれてない?」 淡々と、だけど少し怒気を含んだ声で次々と降ってくる質問は怖かった。 「あ、いや…そう、じゃない…けど…聞いて気持ちいいものじゃないから…あんま話せない、…」 しどろもどろになりながら答えれば私より高い位置にあるはずの目線がすっと目の前で重なった。 「でも俺は全部結優に話した。俺の弱いところも含めて、好きでいてくれるかなって思ったから。だからよかったら結優も話してほしい、な…?」 すべてをさらけ出すことはとても簡単だ。でも、もし…もしそれで気持ち悪がられて、拒絶されたら私はきっとしばらく立ち直れない。 何も言えなくて、爪が手に食い込むくらいぎゅっと握りしめると貴斗はそっと私の手を取った。 「大丈夫、絶対ひかないし、何があっても俺、結優の味方だから。な?」 あぁ…きっとこの人なら大丈夫なんだろう。私の全てを受け入れてくれるんだろう。 「…わかった。」 立ち話するには長い、と近くの公園へ2人で歩いた。
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