始まり

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「高海ー」 「結優ちゃーん」 「結優ー」 中学に入学して2ヶ月。 この前の不安は嘘のように、中学生活は充実している。 勉強はスッと頭に入ってくるし、自分的には好きではない、この少し整った顔のせいか告白だってされる。 そして… 1番楽しい時間はやっぱり部活。 「経験は少しって…絶対少しじゃねぇ…」 「私より上手なんですけど?!」 「この前、部長のスマッシュ普通に取ってたよ」 「フォーム綺麗…」 入る前からなんとなくわかっていた。 先輩たちと同じくらいの力はあるんじゃないかと。 でも… それは私1人に向けて言われていることではなかった。 「結優、ちょっと付き合え」 私と同じく経験者の貴斗にも向けられた言葉だった。 「貴斗さぁ…休憩時間は休憩するためにあんだよ…少し休憩しろ。そんで水分補給して汗拭いて。ぶっ倒れても知んないよ」 貴斗がいつも使っているタオルを勝手にかばんから取り、貴斗に投げ渡す。 クリアが飛ばない、スマッシュが入らない、ヘアピンが高くなる、互いの問題点を見つけては互いが解決していく。 そんな光景を見ている友達からは『結優たち付き合ってるの?夫婦みたい笑』と散々からかわれる。 たしかに貴斗は高身長でスラッとしててかっこいいとは思うけど… バシッ、ポーン、バシッ、ポーン、バシッ、ガチッ。 リズム良かった音が途切れた。 「レシーブの時足ベターってなってる。いっつも言ってんじゃん、かかと少し浮かせるくらいだって」 「じゃあ結優やって。俺スマッシュ打つ」 バシッ、ポーン、バシッ、ポーン、バシッ、ポーン、バシッ、ポーン…… 「「疲れた…」」「「長い、終わり!」」 いつも同じタイミングで疲れて、同じタイミングで終わりにする。 バドミントンの技術は2人合わされば間違いなく最強だと思う。 体力はもちろん貴斗の方がある。 でも、レシーブ力は私の方がある。 攻撃力は貴斗の方が威力はあるけどコントロールで言えば私の方がある。 出会ってたった2ヶ月だけど、バドミントンに関してなら貴斗のことはほとんど知っている。 それは向こうも同じ。 だから 「大会だけどさ「俺はお前と出るぞ」…っ言おうとしたこと先に言うな」 大会が近づいてきているから貴斗に聞こうとしたら当たり前のようにそう返ってきた。 大会の種目は男女それぞれ個人戦がダブルス三組、シングルス二組。 団体戦はオーダー表に書かれている8人の中から5人がシングルス一組ダブルス二組で出場する。 そして一校につき混合ダブルスが二組。 私は、個人戦で勝ち上がれるとは思ってないので貴斗と混合ダブルスで出ようと思っていた。 「俺ら2人で出れば全国出場だって狙えるからな!」 普段、無表情で言葉数も少ない貴斗が珍しく満面の笑みで私にそう言った。 その瞬間、胸がキュッとなった。 「そうだね!頑張ろーな!」 貴斗が見せる笑顔は、私以外の女子相手では見たことがない。 その事実がなぜかすごく嬉しかった。 私が自分の気持ちに気がつくのはもう少し先のお話。
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