2人が本棚に入れています
本棚に追加
地区大会、市大会
体育館は5月6月からサウナのように暑い。
気温が25℃とかでも湿度が高く、体感温度は30℃くらいに感じる。
それに風でシャトルが煽られるので、窓やドアも開けることができない。
――――――――――――――――――――
そんな中、大会は開催される。
この辺の地域は競技人口が多い。
そのため第一ブロックから第六ブロックまである地区大会から始まる。
各ブロックの上位二人、二組、ニ校が『決勝大会』という名の『市大会』に進むことができる。
私と貴斗の目標は地区大会1位通過。
そして市大会で優勝して県大会に進むこと。
幸いにも私達の学校、第三ブロックは経験者が私と貴斗以外いない。
――――――
団体戦は順調に進み、男女とも圧勝で1位通過。
そして…迎えた個人戦。
女子のダブルス、女子のシングルス、男子のダブルス、男子のシングルス、最後に男女混合ダブルスという順番で試合は進んでいく。
私と貴斗以外は2、3年なのに最後の試合が1年って…
いたたまれない気持ちになったけど先輩たちの試合を見ているうちにそんな気持ちは吹っ飛んだ。
声を上げて応援して、手が痛くなるくらい拍手して、勝った瞬間、負けた瞬間は思わず泣きそうになって。
やっぱり私はバドミントンが大好きだと改めて感じた。
予定時間より40分ほど遅れて男女混合ダブルスの試合は始まった。
「いってらっしゃい!」「勝って戻れよー」「2人なら絶対大丈夫!」「頑張ってぇー」
先輩たちは嫌な顔1つせず、笑顔で私達を送り出してくれた。
「「いってきます」」
ベンチから立ち上がり2人で声を揃えコートへと向かった。
「先輩たちさし置いて出てるんだ」
「負けたら俺ら殺されるぞ」
「「全部勝つぞ!」」
パンッとハイタッチを交わした私達は勝つことだけを考えて試合に臨んだ。
――――――
中学最初の試合はカウント2-0で勝利を収めた。
その後もストレートで勝ち進み、私と貴斗はブロック1位通過を決めた。
ベンチに戻れば先輩たちは口々におめでとうと言ってくれた。
「ありがとうございます」
「市大会も先輩たちと一緒に精一杯頑張ります!」
1位が決まった瞬間は満面の笑みだったというのにベンチに戻る頃には、いつもの無表情の貴斗になっていた。
「やったな」
私がそう言うと貴斗は大切な物を触るように私の頭にポンッと手を置き
「そうだな、次も勝つぞ」
と微笑みながら優しく言った。
その瞬間、自分でも自分の顔が紅くなったのがわかった。
どうすればいいのかわからず、固まること数秒。
すると先輩たちから
「おーいそこ!イチャつくなー」
「エース同士お似合いカップルじゃん」
「リア充は爆発してしまえぇー」
とからかわれてしまった。
「やめてくださいよー!」
必死に否定し、あわてて貴斗の隣をサッと離れる。
「…まだ、です」
そう聞こえた気がして貴斗の方をチラッと見たけどそこにいたのは、相変わらず無表情のいつも貴斗だった。
最初のコメントを投稿しよう!