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ガチャッと家に入るとモワッとした空気が体を覆った。
両親はいつも通り仕事へ、ひーくんも大学後にバイトと言っていたからエアコンはついていない。
あっちぃーと思いながらピッと部屋のエアコンをつける。
学校から持って帰ってきた荷物を片付けようとリュックを開けるとさっき貴斗がくれた絵がでてきた。
すごいなぁーと素直に感心してしまうくらい本当に上手。
「絵は壊滅的だからなぁ…」
溢した言葉に思わず苦笑してしまう。
自分で言うのもあれだけど、文字は結構キレイに書けるしデザインとかもササーッと書くことはできる。
だがしかし…絵は本当に壊滅的である。
棒人間が得意です、としか言えない程の画力の無さ&センスの無さといったら。
そんなことを思いつつ、壁にペタッと貼り付ける。
なんとか、大量にあった荷物を全て片付けて(部屋の端に寄せただけ、なんてことは全然ない、うん、違う)夏休みのスケジュールをたてる。
小学校と比べると桁違いの量が課題として出てるし、なにより部活が多い。
塾もクラブもあるのになぁ…と思わずため息をこぼす。
週5で部活、週3〜4でクラブ。
しかも塾も普段なら1時間半×週2のところ夏期講習という地獄の期間は3時間×週4に増える。
忙しい日なんて午前中部活、午後塾、夜クラブになってしまう。
あれ…夏休みって休むためにあるのでは…?
お盆の期間は塾も部活もクラブも無いから遊ぶのはその辺ぐらいか…と考えていたところでベッドに置いていたスマホが音を立てた。
『ゆーうー!いつ遊ぶ??てか宿題多すぎて俺死ぬんだけどw』
貴斗からのメッセージが数秒前の他にクラスメイトからも何件か届いている。
『花火大会一緒に見に行かん??』
『夏祭り女子皆で行こうってなってんだけど行ける?』
『大会いつ?応援行けたら行きたいんだけど大丈夫かな?』
『海かプール絶対行こ!あ、でも彼氏と行くか!ごめんごめんw』
『ディズニーいつ行く??』
『バドしに行こーなー』
皆から誘ってもらえて嬉しいなぁ、と人気者気分を味わう。
それでも圧倒的女子からの誘いが多くてなんとなくしんどくなる。
1人ずつ返信して、また返事が返ってくるとめんどくさいので再びベッドに放り投げる。
私は基本的に誰かと一緒にいたい、と思うことの方が多いけど、ふとした時に1人にしてほしいな、と思うことがある。
もちろん貴斗は別だけど。
「…女子に生まれてよかった、かな…」
自分で呟いておきながら思わず顔を歪める。
――――――
私が恋愛になんとなく抵抗がある理由。
先輩や友達に男子みたいにかっこいいねと言われるとイラついてしまう理由。
私がショートカットにする理由。
私の行動が相手中心の理由。
私の喋り方が男子よりの理由。
貴斗にこの話をしたらなんて言われるか、そう考えるだけで怖くてたまらない。
最近、というには遠すぎるが過去、というには近すぎる話。
その時、私は初めて、自分の存在をひどく恨んだ。
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