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それから私は全てを話した。
てぶん途中で泣くな、と思っていたら案の定泣いた。
でも、そんな私に貴斗は優しかった。
うん、うん、そっか、そうだね、うん、と自分の思ったことを言わずにただただ相槌を打つだけだった。
それが私にとって自分の意見を押し付けてない感じですごく嬉しかった。
私のことを気持ち悪がることなく、ありのままを受け入れてくれた。
きっとこの夏の私は貴斗の隣でずっと笑っていられるんだろうな、なんて、そんな気がした。
――――――
そこからの夏休みは本当にあっという間だった。
部活に追われ、課題に追われ、塾に通い詰め、家の手伝いをして、クラブに参加し、毎日クタクタになって死んだように眠る日々だった。
そんな代わり映えのない日々だったけど1番覚えているのは少し遠出して行った夏祭りの日。
知り合いに会いたくないから、と電車に乗って夏祭りに行った時の帰り。
駅に着き、2人で手を繋いで、ゆっくり話をしながら歩いていたその時。
名前を呼ばれ、ん?と斜め上を見上げれば唇に自分のものではない何かが当たる感触。
スッと貴斗の顔が離れていくのを見てやっと理解した。
―――レモンの味…しなかったな。
そんなことを思いながら9月初旬、私は再び制服に腕を通して、学校へと向かう。
きっと、また新しい景色が広がっているだろうから。
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