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「結優ちゃんめっちゃ可愛い!」
「貴斗君ってイケメンだよね…」
「推せる」
「お似合いよな…」
市大会で優勝した、というのがここ1週間で学校全体に広がり、廊下を歩くだけでジロジロ見られるようになってしまった。
私は比較的友達が多いし、好友関係もあるから見られるようになったって言っても前とそこまで変わりはしない。
でも、貴斗はクラスでは大人しめキャラで注目されるのは好きじゃないらしい。
だから
「結優、部活行くぞー!」
貴斗大丈夫かな…なんて心配をしてた。
けど、そんなのは無駄だったみたい。
ホームルームが終わると同時に私の席に来て私を拉致るように部活へと連れて行く。
「貴斗、大丈夫?」
『一応』心配だし聞いてみる。
すると
「なにが?俺大丈夫じゃないように見えるの?!」
なんて天然キャラ爆発みたいな発言が返ってきた。
「ぷはっ…その様子なら大丈夫だな笑」
1人で勝手に解決してスキップしたい気分で体育館へと向かう。
「えーなんだよ!?気になるじゃん!」
「んーん!なんでもない!」
えー、と口を尖らせる貴斗が可愛くてまた1人で笑ってしまう。
「まぁそんなことより3週間後には県大会なんだからしっかりやんぞ」
ヘラヘラしている私を見ていきなり真剣な声色で貴斗がそう言った。
「あったりまえ。目標は全国出場だから1年のうちに県大会で通用するくらいには強くなりたいしな」
私がそういうと貴斗はそうだな、というように微笑んだ。
その瞬間、私は胸がキュッとなった。
まただ。
前も貴斗のこの表情に胸がキュッとなった。
この気持ちは自分でもよくわからなくてもやもやしたまま体育館へと向かった。
――――――
「気をつけーれぇーい」
「「「「ありがとーございましたー」」」」
「夜遅いし気をつけて帰れよー」
「「「「うぃーっす」」」」
先輩たちと戯れ合いながら一緒に帰ろうとしたその時。
「高海と佐久村はちょっと残ってくれ」
普段は絡みやすい顧問の先生が何やら深刻そうな空気を纏いながらそう言った。
「「はい」」
先輩達に手を振り、2人で先生の前にピシッと立つ。
「さっき市の選抜強化合宿メンバーに選ばれたって連絡がきた」
怒られるのかと思ってたら飛んできた言葉は信じられない言葉だった。
「「は…?」」
お互い顔を見合わせ間抜けな声が出た。
「強制じゃないから無理して参加しろとは言わない。期間も1ヶ月半後の夏休み直前の1週間で学校休むことになるし長いから、親御さんとよく話し合って決めること!」
とりあえず一語一句聞き逃さないように必死に聞いて元気よく
「「はい!」」
と貴斗と声を揃えて返事をした。
「あと、もし参加するって言うなら覚悟しといたほうがいいぞ」
先生には私達がほぼ100%の確率で参加しますって言うとバレてるっぽい。
頭に?マークを浮かべていると先生が再び口を開いた。
「周りはほっとんど3年生らしいからな、しかも男子ばっかり!佐久村は大丈夫かもしれないが高海にとってしんどいかも」
あーそゆことー、そんなん気にしねーな、と思いつつ私は先生に思いを告げた。
「私はそんなの気にしません。少しでも強くなりたいです。帰って家族に相談してみますけど、きっと『自分でやると決めたのなら全力でやるんだよ』って言ってくれると思うので絶対参加します。貴斗は?」
「俺も結優と同じです。他校の強い人とやる機会なんて滅多にありません。それに俺、1人だとうまくコミュニケーションとかとれないけど、結優が一緒に参加してくれるならそれも大丈夫だと思うので」
2人でそう熱弁すると先生はフッと笑い
「お前らなら大丈夫そうだな。それにそう言うと思ってたし笑。でもちゃんと親御さんと話し合うんだぞ?いいな?」
と後押しするかのように言った。
「「りょーかいです!」」
2人で声を揃えてそう言って、先生にお辞儀をしてその場を後にした。
強化合宿メンバーに選ばれたよってひーくんに伝えたら飛び上がって喜んでくれるかな、なんて思いながら夜の道を歩いた。
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