地区大会、市大会

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「ただいまー!!」 元気よく家に帰ると珍しく、両親が帰宅していた。 「「「おかえり〜」」」 ひーくんと両親はリビングで談笑していた。 そんな中に私は制服を脱ぐこともせず、突撃した。 「聞いて聞いて!!私選ばれたよ!」 「「何に??」」 両親のその反応に、言ってから主語がないことに気がついた。 でもひーくんは目を真ん丸にしてもしかしてと言いたそうな顔でこう言った。 「市の選抜強化合宿のメンバー、とか?」 私はその言葉に元気よく頷いた。 「貴斗と一緒に選ばれたの!!参加したいんだけどいい…?」 両親に聞くと少しびっくりした様子だったけど予想通りの言葉が返ってきた。 「もちろんよ、自分で決めたことなら頑張るのよ」 「紘より強くなれるように頑張れよ」 にっこり笑ってそっと後押しをしてくれた。 「ありがとう!」 気分上々で部屋に戻ろうとすると一緒にひーくんもついてきた。 「本当におめでとう結優、俺と一緒だな!」 部屋で片付けを手伝ってくれながらひーくんはそう言った。 「ひーくんが参加した時って女の人いた?」 先生に言われたことが気になり、ひーくんの時はどうだったのかと思い、聞いてみる。 「んーたぶんいなかったと思う。ほとんど2、3年の男子だった気がする…なんで?」 「先生に女子はいないに等しいから大変かもみたいなこと言われたからひーくんの時はどうだったのかなーって思って」 「あーそゆことねーって…女子がいないんだ!そうだよ!危ねぇ!いいか結優!男なんて皆、狼なんだから気をつけるんだぞ?!さすがに行くなとは言わないけど…本当に気をつけること!!何かあったら貴斗君に言うんだぞ?」 親か!って思わずツッコみたくなる内容をマシンガントークでぶちかますひーくんに思わず私はお腹を抱えて笑った。 「笑い事じゃない!!可愛い妹が野蛮な狼に襲われるかもしれないんだぞ?!家族として心配すぎる…」 そう言うひーくんが私の目には大学生とは思えないくらい幼く、可愛く映った。 私は精一杯背伸びをして、腕を伸ばしてひーくんの頭をなでなでした。 「大丈夫大丈夫!ひーくんが思ってるほど私か弱くないんだから!帰ってくる頃にはひーくんと同じくらい強くなってるかもよぉ」 ニコッとしながらそう言うとひーくんは安心したようにクシャッと笑った。 「俺より強くなるなんて5年早いな!」 「なんでそんな具体的な数字なの笑」 「きっと将来は結優の方がうまくなると思うからな!俺は大学出たらプロ行くことが決まってるけど、結優はもっと早い段階で決まるかもしれないだろ?そうなったら結優の方がうまいってことじゃん?」 にこにこしながら、でも少し寂しそうにひーくんはそう言った。 なにか言ったほうがいいのかと悩んでいたらひーくんが再び口を開いた。 「まぁでも人生なにがあるかわかんないからな!やりたいことやるんだぞ?」 「うん!ありがとぉ!」 そこで会話は終わりひーくんはバイバーイと部屋を出て行った。 1人になった私はベッドにゴロンと横になる。 「ひーくんよりうまくなれるかなぁ」 1人きりのシンとした部屋で呟いた独り言はとても大きく聞こえた。 ―――――――――――――――――――― 時間はあっという間に過ぎていき、気がつけば県大会が翌日に控えていた。 今日はしっかり寝ること、と顧問の先生に言われたので部活はなかった。 「結優」 貴斗と2人並んで歩いていた帰り道。 ふと会話が途切れた時に深刻そうな声で私の名前を呼んだ。 「ん?どうしたん?」 「結優は…好きな人とかいんの?」 思っていたよりもずっとほのぼのした内容で腰を抜かしそうになった。 正直、恋愛話は苦手だけど貴斗が真面目に聞いてくるからしっかりめに答える。 でも、小学校の時にあったこと全部は話さないし、話すつもりもない。 「いきなりだな笑。好きな人、かぁ…小学校の時、皆がかっこいいって言ってた人から告られたけど…特に好きとか思ってなかったから断った。今まで自分が誰かを好きになるってことはなかったかなぁ」 そう言うと貴斗は少しホッとした表情で 「そっか…」 とだけ呟いた。 それ以上なにか聞いてくることはなく、貴斗と別れる道まで来た。 「じゃあまた明日の大会で。頑張ろーな」 私がそう言えば貴斗は無言でスッと手を挙げた。 そしてあたり一面に響く大きな音をたてて私と貴斗はハイタッチを交わした。 「「絶対、関東大会行くぞ」」 声を揃えて目標を掲げ私と貴斗はその場を後にした。
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