ささやかな気持ち

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古庄はいつも、朝早く出勤する。 朝の静かな時間帯に、大体の雑用を済ませるらしく、授業のない時間には新聞を読めているというわけだ。 真琴は出勤するなり、生成りのナプキンに包まれたものを、そっと古庄の机の上へと置いた。 見るからにお弁当だと分かるそれを見て、古庄は目を丸くし、無言で真琴を見上げた。 「一昨日のお礼です……。お口に合わなかったら、ごめんなさいね」 いつも仏頂面になってしまうのを意識して、真琴は努めて笑顔を作った。 ぎこちなく笑う真琴の顔を、古庄は穴が開いてしまいそうなほど凝視している。 「……ウソ!これ、俺が食っていいの?」 古庄はお弁当を両手で握り、椅子から立ち上がった。 「どうぞ。でも、美味しさは保障しませんよ」 真琴は古庄の直視から逃れるように顔を背け、自分の机に着いて荷物の整理をする。 「うわ!!ありがとう!手作り弁当なんて、もう当分記憶にないくらい食ってないし、味なんかどうだって……」 と、古庄が言いかけたところで、真琴がチラリと古庄を見上げる。 「……いやいや、賀川先生が作った弁当だったら、美味しいに決まってるし」 そんな古庄の素直な感激ぶりに、真琴は少し笑いをもらした。
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