目の覚めるような人

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目の覚めるような人

新たに着任する学校に赴くときは、いつでもかなり緊張する。 親しく一緒に苦楽を共にした同僚たちと離れ離れになり、一人で新しい学校の門をたたく。 新しい出会いに心を躍らせるよりも、知らない人間の中に放り込まれる不安の方が先に立つ。 ――私はここで、うまくやっていけるだろうか…… 異動がある年は、新居を決めて引っ越しやら着任のあいさつやらで、ゆっくり桜の花を楽しむ暇もない。 けれども、この学校の桜の花の見事さはどうだろう……。 真琴は、思わず正門脇のしだれ桜の老木を見上げた。 春というのに青く澄んだ空に、映えるピンク色のおびただしい花々たち。 桜野丘高校――。 この名にふさわしいと、真琴は思った。
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