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「倉じいだったら何が欲しいですか?」
「僕に聞いてどうする。莉亜の父親となると、僕とはひと回り違うくらいだろうに」
父は今年で五十五歳になるはずだから、まさにひと回りだ。
ここで言うひと回りって干支のことでいいんだよね。
「それでも、参考にしたいんです」
珍しく私が折れずにこう言うと、倉じいは少し困ったような笑顔を見せつつも、ちゃんと考えたうえでこう言ってくれた。
「これはずっと前から思っていたことなんだが――」
倉じいはこう言って言葉を切った。とても気になる言い回しだ。
早く続きが聞きたい私は何も言わずに倉じいの顔をじっと見る。
「――父の日も母の日も、季節感が固定されるのが気になるんだよな」
言わんとすることはなんとなくわかったけど、誤認したくないからもう少し詳しく話してもらおう。
「どういうことですか?」
「ほら、毎年五月と六月だろ。こうなると、必然的に夏を感じさせる贈り物に偏るよな」
「確かにそうですね。私の場合、両親ともに誕生日が寒い時期だったんで、そこはうまく使い分けていましたけど」
「それはいいな。僕は逆で、二人とも春夏の生まれだったから、誕生日とセットにしたいとよく思ったものだ」
私は誕生日がクリスマスの三日前だから、誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントは一緒になっていた。
子どもの頃は内心でそれを悔しく思っていたけれど、あげる側からすれば好都合でしかないんだよね。
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